実の発生に関連が深いと考えられるので、相手船に注意し監視を続けていたものおよび相手船を視認していなかったものを参考として表の下段に記載した。
表1および表2の内容をみると「相手船が避ける」という判断がとび抜けて多いが、見合い関係においては海上衝突予防法等の航法規定に基づき、いずれか一方または双方の船舶に避航義務が生じるから、この判断が多いことはけだし当然ともいえる。
互いに視野のうちにある場合と視界制限状態の場合の航法の違いによって、判断にも特徴が出ており、漁船以外の船舶に追越しおよび相手船の進行方向の予測に関する判断が多いのは、漁船との航行形態が異なることからくるものと思われるし、漁船に「まだ距離がある」という判断が多いのは、小回りがきくことによる操船感覚に基づく判断のように思われる。
相手船を視認後引き続き監視を続けた操船者は、漁船以外の船舶で約九%、漁船で約四%であり、相手船を視認していなかった操船者は漁船以外の船舶で約二四%、漁船で約五七%となっている。
三、見合い関係における双方の操船者の判断
1、双方の操船者の判断例
二隻の船舶が互いに見合い関係にあるとき、双方の操船者は相互の関係から衝突の危険の有無を判断し対応する。双方の操船者の判断がその時の状況に適合したものであり、航法の規定に基づきとられる措置が適切であれば、衝突は避けられるはずである。
しかし、双方の操船者が見合い関係の状況について、それぞれ異なった判断をし、それに従って行動すれば、双方の操船者にとって予想した事態と実際に起きる事態は異なってくることになり、これに対応しきれなければ事故に発展することになる。
実態では、操船者はどのように判断しているのか、また、状況の認識に差異があるのかをみるために表一および表2の中で互いに相手船を視認出来る場合で最も多い「相手船が避ける」と言う判断を例にとり、一方の操船者によるこの判断に対し相手船の操船者がどのように判断したかを詞べてみる。
衝突の事例は、前に述べたように漁船の航行上の特性を考慮し、漁船以外の船舶同士、漁船以外の船舶と漁船および漁船同士に区分し、それぞれの事例について一方の操船者が「相手船が避ける」と判断したとき相手方の操船者がどのように判断したか、その内容を表3、表4および表5に示す。
<表3>漁船以外の船舶同士

2、操船者の判断の差異
「相手船が避ける」という判断